T1100Gって
高強度でおなじみのプリプレグ。
※プリプレグとは釣竿・ロッドを作るための素材の事
東レが開発販売している「T1100G」というプリプレグが今釣竿業界で旋風を巻き起きしております。
そうなると出てくるんですよ。
いろんな考えの人達が。
考えは人それぞれですが、事実ははっきりしておきたいですね。
今江克隆氏が一般の釣り人に釣竿・ロッドに用いられる素材、つまりプリプレグの話を広めた話はこちら↓
釣竿設計士の苦悩①
「強さを活かし細く薄く作る」理論
まずこのT1100Gという素材、非常に強度が高い。
これは正解です。
どれくらい強いかは図を見れば一目瞭然です。
次に「細く薄く作れる」って部分。
これはちょっと違うと思います。
何故か。
「強さ」と、釣竿・ロッドの「調子」は全く別だからです。
ただ強度が同じ棒を作りたいなら、強さの分、細く薄くしても同じ強度の棒が出来上がるでしょう。
しかし釣竿・ロッドってそうじゃないんです。
仕掛けを放る。魚を掛ける。魚とやり取りする。魚を取り込む。
いろんな動作を考え、調子という曖昧だけど釣竿・ロッドに一番大切な事を考えて設計していく必要があるのです。
細くする
同強度だからといって細くすれば柔らかくなります。
細くすれば強さのアドバンテージを凌駕する勢いで柔らかくなります。
竿の硬さは径の4乗に比例していきます。2倍細くしたら20倍弱柔らかくなるという事です。
ちなみに弾性率を2倍にしても2倍しか硬くなりません。
さらに言うならT1100Gは強いけど、「硬さ」つまり「曲がりにくさ」は弾性率相応、つまり中弾性の硬さです。
弾性率は曲がりにくさって話はこちら↓
t数至上主義に物申す
薄くする
また同強度だからといって薄くすれば折れる可能性が出てくるかもしれません。
素材が強くなっても引張強度とは別の座屈で折れる可能性が存在する以上、肉厚というのは非常に重要に要素になってきます。簡単に言えば肉厚が薄すぎると折れやすくなります。
座屈で折れるって話は以前しました。
釣竿・ロッドが折れる本当の理由 その①(原理編)
まとめ
「強度」そのまま「細く」「薄く」なんて夢のような話は、「調子」を「実釣の際の強度」を考えた時にありえないって事が理解してもらえたでしょうか。
バランスつまり持ち重りを解消するため為の肉厚や太さという設計もありますのでいたずらに薄さや細さを追求することもできません。
何度も何度も繰り返し言いますが釣竿・ロッドの設計は何かひとつの要素だけで決まるものではありません。当然素材だけでは何も決まりません。
T1100Gは本当に良い素材です。
これは間違いないです。
がこの素材だけでは目的の竿が作れない事も当然のようにあります。
相応しくないのに売るためだけにT1100Gを使用するようなロッドやメーカーが出ないことを切に思いますし、ユーザーがT1100Gだけに釣られる事がないように祈ります。