釣竿・ロッドが折れる本当の理由 その①(原理編)

はじめに

多くの皆さんが興味を持つ話題ですよね。

○○のメーカーの釣竿は折れやすい。

高弾性のロッドは折れる。

軽い竿は脆い。

こんな話よく耳にしますが、まずは「竿が折れる原理」を釣竿設計士目線で説明していきたいと思います。

「釣竿のブランク」の話として読んでください。

①引張と圧縮

釣竿はどんなものでも曲がります。この曲がっていった時に限界を超えると折れます(破断します)。

釣竿が曲がっていくところを横から見る感じで想像してください。

中空のブランクが弧を描いて曲がっていったとき内側と外側に分けることができます。

内側は素材が圧縮し、外側が引っ張られる状態になり、その名の通り圧縮、引張と呼ばれます。

この内側と外側にかかる力の違い、つまりどちらが破断するのか分かりますか?

破断するのは内側、つまり圧縮された側になります。

カーボン素材の強度というのは通常引張強度として表示される事が多いと思いますが、カーボンが軽くて強いという時の「強い」とは、引張の強度が「強い」という事を意味していると思います。

圧縮と引張と比べた時に圧縮の方が弱いが為に、破断するときは必ず圧縮された内側の方という事になるのですが、これは引張より圧縮の方が弱いというカーボン素材(炭素繊維)の性質があるからです。

②座屈

釣竿を曲げていった時、弧を描きます。

弧を描くということは変形していくとも言えます。

前項で説明した引張、圧縮もそうなのですが、他にも変形する箇所があります。

ブランクの断面です。

中空のブランクが弧を描いていった時、ブランクの断面はどうなるでしょうか?

ブランクの断面が真円から楕円に変形していきます。

この楕円に変形する現象のことを釣竿の世界では座屈と呼びます。

物理の話ですと楕円に変形することだけを座屈というわけではないと思いますが、釣竿の世界においては楕円に変形することをそう呼びます。

釣竿が曲がった時は必ずブランクの断面が楕円に変形していきますので例外はありません。

曲がっていくにつれ断面が円から楕円に変形し、その度合いが進行していくと、やがて破断します。

もっと細かく言えば、楕円になった断面の左右方向の内側で破断します。

左右方向の内側というのはこの図の事です。

何故、この部分で破断するのかわかりますか?

外側じゃないのか?何故上下方向ではなく左右方向なのか?

答えは単純です。

曲がりのrが小さいからです。

rが小さいというのは簡単に言えば「曲がりが急」ということで、曲がりの限界で折れるということは、より変化の大きい箇所が最初に破断するとも言えます。

③圧縮と座屈

釣竿が弧を描いた時に、引張、圧縮、円の変形によって破断すると説明してきましたが、結局1番の原因は何?って話ですよね。

『弧を描くのが釣竿』という前提ですと、圧縮より楕円に変形した時に破断するの場合が多いと言えます。

これは座屈の項で「曲がりのrが小さい」ということを述べましたように、圧縮より座屈の方が曲がりのrが小さいからです。

別形状のカーボン製品だとそうでは無くなるので、あえて多いという表現にしましたが、弧を描く釣竿に限ってはほぼそうだと思います。

④まとめ

とりあえずここまでで釣竿の折れる原理を説明してきました。

あらゆる方向から釣竿、ブランクを見て、「rの小さい箇所」つまり「曲がりが急な箇所」で折れるという事になります。

不良品じゃない釣竿である事が前提の話ですし、もちろん例外はあるのですが、釣竿が折れる原理は意外に単純です。

次回は竿のどの部分で折れるのかを説明しますので、またよろしくお願いします。

ぱおログの管理人「ぱお」です。 元釣具メーカー勤務で、主に釣り竿(ロッド)の設計と開発に携わっておりました。 自社ブランドはもちろんOEMで様々なブランドの竿も設計してきた経験を活かして釣り人の皆さんに役立つ情報を発信していけるようなブログを目指しております。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です