釣り人が求める事
軽くて感度が良くてパワーがあって粘りがあって・・・
みたいな話を良く聞きます。
コレまでに何度も説明してきましたが、釣竿の命とも言えるブランクの設計は、乱暴に言ってしまえばマンドレル、カーボンの素材(それ以外の素材も含みます)の組み合わせだけであって、パワーのある竿とはこういう設計、感度がいいのはこういう設計という絶対がありません。
マンドレルとカーボン素材の組み合わせは竿それぞれと言えば早いのですが、マンドレルは無限に設計出来ますし、カーボンの素材の種類や巻き方、カットパターンも無限です。
無限と無限の組み合わせですから、どんなブランクでも作れないモノはないとも言えます。
無限に作れるブランクをどういう風にして作るか、どういう設計をするかが釣竿設計士の仕事です。
設計士の役割
釣り人の求める事を数値化できること。
過去の記事にその事が説明してあります。
OEM生産の釣竿ロッドの真実
水中の様子や魚のアタリを伝えやすい竿を一般的に感度の良い竿と言いますが、感度の良い竿の設計方法というは残念ながらありません。
無限の組み合わせから、そう思ってもらえるような設計をします。
感度の良い竿
カーボン素材の弾性率と感度は比例しているように思われているフシがありますが、これは間違いです。
以前に軽くて感度が良いと評された釣竿を作った事があるのですが、モデル毎で設計は異なるものの、売れ筋モデルの多くに使用したカーボン素材は24tか30tのいわゆる中弾性カーボンに分類されるモノでした。
宣伝広告やカタログに使用されたカーボン素材のt数についての詳しい説明は記載されていなかったと思いますが、軽さと感度からくる想像からか、40tカーボンで作られている様に言われておりました。
その時代は今よりも「高弾性=良い竿」という風潮があったのですが、本当の中身は違ったモノでした。
カーボン素材の弾性率だけを見た時に、残念ながら感度は比例していきません。
弾性率の事は過去に説明しました。
t数至上主義に物申す
釣りは頭を使う趣味・遊びですので、釣り人の探究心や想像力というのは相当だと思いすし、案外想像と事実が一致していて驚かされる事も多いのですが、この件に関しては間違いでした。
感度の良い竿のよくある設計方法や、その他にも粘りがある等々の設計方法というのは、メーカーや設計士毎にあるかもしれませんが、所詮よくある設計方法止まりで、これさえすれば確実にそうなるという方法は無いはずです。
ですから設計士はそれを模索しながら設計していくのです。
専用設計って
大きく専用と言えば、シーバスロッド、エギングロッド、バスロッド、鮎竿、ヘラ竿等の、対象魚によって区別されたモノがあります。
細かく言えば、バスロッドの中の、ライトリグ用、ラバージグ用、巻物用。
さらにライトリグ用からノーシンカー用、ジグヘッド用にと分類される事もあります。
最近ではシーバスロッドから派生したであろう、ヒラメなどのフラットフィッシュ用のサーフロッドと呼ばれるモノもあります。
これらについても同じことが言えます。
シーバスロッドだからといって特別な設計方法はありませんし、エギングロッドでも特別な設計方法はありません。
シーバスロッドとエギングロッドは外から見ても似ている部分があるので、設計的に似ている事も想像がつくと思われますが、シーバスロッドとエギングロッドを分ける設計の境界線なんてものも存在しませんし、先程挙げたサーフロッドなんかはもっと曖昧だと思います。
もっと細かく分類されたバスロッドでも全く同じ事が言え、ノーシンカー用に使う竿の設計方法なんて存在しませんし、ジグヘッド用だろうが、何用だろうが、それ用の設計方法も設計の境界線もないのです。
上記で挙げた対象魚別に区別された釣竿の中に、雷魚用ロッドとGT用ロッドと呼ばれるモノがあります。
雷魚ロッドとは文字通り雷魚を釣る為で、GTロッドとはこちらも文字通りGTを釣る為で、どちらも対象魚別に専用に設計された釣竿という事になります。
この全く違った魚を釣る為に開発された釣竿のブランクの設計は大概非常に似ています。
雷魚は淡水の水草や藻で覆われたいわゆるヘビーカバーでカエルに模したフロッグと呼ばれるルアーを使います。雷魚はGTほど大きくなる魚ではないのですが、シチュエーションやキャッチ率を上げる理由も相まってPE製の6号から10号の釣り糸を使うことが一般的です。
GTは海水の珊瑚礁やその珊瑚礁の切れ目や落ち込みでポッパーやペンシルなどを使います。通常100gを超えるルアーを使うことや、GTという魚の最大サイズ等や性質とシチュエーションを考え、PE製の6号から10号の釣り糸を使うことが一般的になってます。
対象魚や使用する場所は全く違いますし、釣竿としての完成させる為に取り付ける各種パーツ類は違いますが、別々の釣り人達が試行錯誤しながら通ってきた別々の歴史の中でゴールが一緒だった。という事もあるのです。
まとめ
釣り人が求める事をカタチにしてくのが釣竿設計士の仕事というのは何度も説明してきましたが、釣り人が求める事は個人によってそれぞれ違ってきます。
思想や価値観も違います。
もちろん時代や地域差というのもあるでしょう。
設計士はその釣竿のコンセプトを理解した上で、売る側の細かな要望を数値化して釣竿を作りますが、それはあくまでも売る側のコンセプトです。
使う側、つまり釣り人がそのコンセプトに合わせる必要なんて全くありません。
専用設計なんていうのも表向きだけで、もっと言ってしまえば売る側の視点で言っているだけです。
何に使うかは個人の自由です。
理想の釣竿・ロッドは意外なところに存在するかもしれません。