テスターとは
釣竿設計士の立場でテスターというと、もちろん釣竿、ロッドをテストする人の事になります。
テストをしてくれるなら自社の営業マンや関係者もテスターになります。
テストといっても製造上のテストや強度面でのテストなどがありますが、テスターにお願いするのは実釣テストになります。
実釣テストとは文字通り、完成した釣竿、ロッドに想定される釣り方を実際の釣り場で試すことを言います。
これを仕事として憧れを持つ釣り人も多いと思われますが、それ1本で食べていけるかどうかを考えた時、職業として成り立たせる事は非常に困難です。
話が少し逸れましたが、釣竿設計士である私ひとりの判断で釣り竿を作っていくことはほぼありませんでした。
そのことは以前の記事でも説明してあります。
元釣竿開発者が語る釣具業界で働きたい人へのアドバイス②
開発テストとは
もちろんブランクを作った時点でダメならそれは自分の判断で破棄することはあるのですが、とりあえず良さそうなブランクが出来上がったら、自分で組み立てて完成品にして、判断する人、つまりここで言うテスターに送っていました。
それから合否や感想を聞いて、ダメなら修正していくという作業が、開発のルーチンでした。
開発現場の実情
組み立てた釣竿、ロッドの全てを設計士自らが現場に行って判断していけるような環境なら1人で1本ずつ開発していけたと思いますが、
現実的には難しかったと思いますので、正直テスター頼みという事もありました。
これは自社製品の話で、他社つまり自社ブランド以外の製品の実釣テストは当然ですがノータッチでした。
釣竿、ロッドのOEM生産の記事はこちらから
OEM生産の釣竿ロッドの真実
テスターの役割
好きでやっていた釣竿、ロッドの設計ですので、良いものを作りたいという気持ちが大前提としてあるのですが、早く終わらせて楽になりたいという気持ちも少なからず湧いてきて、その狭間に立たされる状況も実際にはありました。
想像できるかと思いますが、何度も何度もサンプルを作り直し、迷路に入り込んだ様な時です。
自分の中でコンセプトの理解が不十分であったり、目的や要望が数値化が出来ない時は、先の見えない暗闇の中で設計する感覚になります。
その暗闇の中で、ゴールに導いてくれるのもテスターの役割かもしれません。
釣竿設計士の苦悩はこちらで説明してあります
釣竿設計士の苦悩①
釣竿設計士の苦悩②
テスターと設計士の関係
私も釣り人ですし、モノを評価する目には多少の自信がありましたので、テスターとの意見の食い違いも多々ありました。
その意見の食い違いこそが良い釣竿、ロッドを作る開発作業の中でのテスターの役割であります。自分1人では出てこなかった貴重な意見なのです。
そして、その意見の食い違いを設計の修正で埋めていくことで、お互いが納得できる釣竿、ロッドを完成させる事ができます。
またその作業がテスター、設計士双方のレベルアップにつながり、今後の別の釣竿、ロッドの開発作業に活かされていきます。
テスターと会社の関係
釣具業界の会社、メーカーとテスターの関係ってよく分からないのが本音です。
テスターになることが目標だっだり、夢であるような人は、テスターになれた事で目的を達成してしまっているので、テスターになったその先で何をするかを考える必要があると思うし、メーカー側もテスターに何を求めるのか、テスト目的なのか、他意はないのか、をはっきりすべきだと思います。
まとめ
ここまで説明してきた釣竿、ロッドの開発作業の現場でもっとも重要な事は、設計士、テスター双方が対等に意見を言い合える環境そのもので、テスターは理論武装した設計士に対し臆することなく本音をぶつけてくる存在であってほしいと思いますし、私が選べる立場だったらそういう人物をテスターに求めると思います。
そして最後に、テスターも設計士も目的は同じでひとつ「いいものを作る」という事を忘れないようにしたいものです。