印籠継の勘違い
印籠継の釣竿、ロッドは1本を切って作っていると思われていますが、実際は違います。
例えば磯のヒラスズキ用のロッドは11フィートの2ピースがスタンダートで、多くのメーカーから販売されていると思うのですが、11フィートの長さを1本で作れる釣竿工場はあるのでしょうか?
素材が長すぎてカッティング出来ない、素材を巻きつけるローリングマシンの幅が足りない、ブランクを焼く炉の高さが足りない、等の工程面で不可能です。
設計的にも、「先と元の素材を完全に分けられる」という利点を捨てることになります。
1ピースロッドは先から元までメインとなる素材は同じ種類のものを使用する必要があります。※例外はあります。
また、印籠継のブランクには割れ止めを目的にした素材を配置する必要があります。
印籠部分のブランクは後から接着されますが、その部分から見たメス部分には必ず割れ止めが必要になります。
マンドレルの設計も専用に作ることが当たり前です。
#1の元部分が継部分になるわけですから、内径のテーパー、つまりマンドレルの外径の設計が重要になります。
「技術力の向上」の一言に集約され、あまりクローズアップされないのですが、この部分の設計にはメーカーと設計士の思想や技術が詰まっております。
印籠継の利点
他の継ぎに比べて、#1と#2の径の差が小さいという事があります。
差が小さいということは曲がりがスムーズとも言えます。
並継等に用いられるような他のブランクを使用しない継ぎ方は、継ぎ部になる外径、内径と硬さの両方を同時に調整しながら設計していきます。
印籠継の場合、乱暴な言い方をすれば継ぎ部は印籠部分のブランクでまかなえますから、硬さを調整することに重きを置き、径はそれほど考えなくてもいいとも言えます。
簡単に言えば#1を24t、#2を30tで作った場合、計算上30tの方の肉厚を2割減らした時に24tと同じ硬さになりますから、#2の方の外径が細くなります。しかしその外径の差はわずかであること、間に継ぎ部が入ることで、見た目ににも気付きにくくなっております。
印籠継の欠点
継ぎ部の重さがあります。
継ぎ部はソリッドもしくはチューブラーになりますが、どちらにしても竿の中間につくパーツとしては非常に重く、バランス的にはマイナスになります。
バランスについては過去に記事にしました。
ルアーロッドの自重にこだわるな
持った時はもちろん、振った時にも違和感は出ます。
印籠継の調子
マンドレル太さとテーパーを考えた時に、継ぎの種類で調子の傾向みたいなものはあります。
しかしこれに関してはあくまでも設計のしやすさであって、例えば同じシリーズの中でこの硬さは印籠継、このアクションは並継といったラインナップの釣竿、ロッドがほとんど無いように、継ぎの種類は問わずに様々な調子を作れると言えます。
まとめ
最近、継ぎのある釣竿、ロッドが流行っております。
そこには釣りのスタイルの多様化、運送の問題などの時代背景があると思われます。
また、流行った中で技術の進歩を理由にすることを見聞きしますが、10年前、20年前、それ以上前からきちんとした継ぎの釣竿、ロッドは当然のように存在していました。
そこからの技術の進歩は間違いなくあるのですが、今になってようやく使える継ぎ竿ができたなんて風に言われてしまうと、その時代に存在したメーカーや設計士、作られた釣竿、ロッドの事を思い、やるせない気持ちになってしまいます。