今回は釣竿、ロッドが折れた場所から原因を探ります。
前回、前々回からの続きです。
釣竿・ロッドが折れる本当の理由 その①(原理編)
釣竿・ロッドが折れる本当の理由 その②(原因編)
竿先の破断
前回、前々回で説明した通り、ブランクに負荷される荷重と、ブランクを保持する角度によって、折れるか否か、折れる場所が変化していきますが、釣竿、ブランクが弧を描いた時に竿先の部分があまり曲がっていないことを不思議に思う方も多いと思います。
これはマンドレルのテーパーとカーボン素材の肉厚の変化が少ない事と、最大のたわみの頂点が付加された荷重によって移動した後の部分、つまりたわみの頂点より先側の変形が緩やかになるという物理的な現象によるものなので、これが悪い事だとは思いませんし、ある種仕方のない部分なのですが、曲がっていないので変形が原因で折れる事はほぼありません。
負荷する荷重、保持する角度は変えず、ブランクの調子を変えた図です。
胴調子のブランクが最も理解しやすいですが、どんな調子のブランクでも先の方の曲がりが少ない事が確認できるかと思います。
この部分が折れるという事は多くの場合別の理由があると思われます。
元の破断
中間部分、元部分が折れた場合ですが、釣竿、ロッドの角度と引っ張られる角度(ライン角度というやつです)や、使用した釣り糸・ライン強度等まで含めた状況がはっきりしないと折れた場所からだけで原因を判断する事は非常に難しい問題なのですが、負荷された荷重が釣竿、ロッド、ブランクの限界を超えた事が大いに考えられます。
釣竿・ロッドが折れる本当の理由 その②(原因編)
前回の「荷重」の項目で説明しました。
バラバラになる破断
折れた時にバラバラになる事を複数箇所で折れたと思われがちですが、実は1箇所で破断しその反動によって別の箇所が破断するといったパターンの方が多いと思われます。
同時に複数箇所が折れているように見えて実はそうでもないということなのですが、これも見た目から原因を判断することは非常に難しいです。
模様の境目での破断
素材の模様が途中で切り替わる釣竿、ロッドがあります。
バットガイドを境目にカーボン素材の見た目が変わったり、ロゴ部分の素材が違ったりする釣竿、ロッドの事です。
そういう設計にした理由は色々あると思いますが、多くの場合見た目を優先した設計であると言えます。
その設計が釣竿、ロッドの調子等の、出来に繋がるとするなら、もっと有効な方法があるはずですし、釣竿、ロッドの曲がりという点において少なからずマイナス要素があるからです。
どういう事かは図で説明します。
多くの場合、ブランクの設計において、基本的に角が尖ったカーボン素材で繋いでいく必要があります。
なるべくキレイな弧を描きたいからで、これは前回、前々回に説明した折れの原理と原因と関係してきます。
上記の図中で、2種類のブランクの曲がりの違いが想像できますか?
きれいな弧を描く事に関しては上の図の方が優れています。
また、どこかで模様を切り替える設計の場合、ブランクの曲がり辛さ(=硬さ)が少なければ少ないほど、釣竿、ロッドの全長に対しての模様部分が長ければ長いほど、影響は大きくなり、キレイな弧を描けにくくなり、結果的にその部分近辺から折れる可能性が上がる、という事が言えます。
分かり易く例えると、柔らかいライトな釣竿、ロッドのバットガイド部分からと、硬いヘビーな釣竿、ロッドのロゴ部分からとでは、影響の大きさが違うってことです。
見せたい模様の素材によってはごく薄い、曲がりに関して影響の少ないものもありますが、だとすればその影響の少ないものを敢えて設計する必要があるのかという考えも出来ます。
趣味の道具ですのでルックスを大事にする考えも十分理解は出来ますし、その素材の特性は活かせますが、こういうことが起こる可能性があることを頭に入れておくと良いかもしれません。
まとめ
各メーカー毎にテスト方法は違いますし、折れや破断に対しての考え方も様々で、釣り人、アングラーの使用方法次第とも言える難しい「釣り竿、ロッドの折れ」について全3回に渡り説明してきました。
釣竿、ロッドの折れを理論的に考えることで、悲しい思いをする釣り人、アングラーが少しでも減れば良いなという思いで書いてきましたがいつも言っていますようにこれが全てではありません。あくまでも参考程度にしてください。
最後に、釣竿のテストと聞くと実釣テストを思うかべる人も多く羨ましく思われがちですが、釣竿設計士の役割を考えた時、記事の中で説明してきたような事を計算しながら屋内で出来るテストの方に重きを置くように会社から言われるのは仕方がなく、実釣テストに行けるような職種の人を皆さんと同じように羨ましく思っておりました。
仕事とは言え、会社の外に出られて、釣り行ける方が楽しいに決まってますから。
ありがとうございました。