4軸模様だけで判断できない素材の繊維角度

はじめに

以前カーボンのt数の話をした中で何度か出たあのワード覚えているでしょうか?

「t数=曲げ辛さ、の他にカーボン素材の角度というものも釣竿の調子に影響してくる」

「同じt数であっても曲げ辛さと同様にカーボン素材の角度を変える事によって強度もアップダウンする」

とブログ内で話しました。

その話はこちらから↓

t数至上主義に物申す

この2文に共通する「カーボン素材の角度」

今回はこのカーボン素材の(繊維の)角度がもたらす意味についてお話します。

基本の角度

まず釣竿を作る上でカーボン素材は0度で使われるという事が基本なのですが、この0度とは何か。

釣竿の1番長い部分、つまり全長を図る部分に対してカーボン素材の繊維が0度で入っているという事です。

この0度というのが釣竿を設計していく基本形となります。

釣竿を作るには複数枚の素材が必要

釣竿はカーボン素材をマンドレルと呼ばれる芯金に巻いて作られていると、これまでに何度か説明してきましたが、そのカーボン素材は作りたい釣竿に合わせて何枚か用意する場合が多々あります。

素材は幅1000mmのロール状(トイレットペーパーをイメージしてください)になって素材メーカーから送られてきますから、竿の厚みを出す時に1000mm 以上のカーボン素材が必要な場合は必然的に2枚以上必要になります。これはあくまでも計算上の話で1000mmのカーボン素材をマンドレルに一気に巻きつける事は技術的に不可能ですので、何枚かに切り分けられます。

さらに、竿の全長分の長さのカーボン素材だけでなく、目的の調子にする為に、例えば竿先から300mm下げた位置から2枚目のカーボン素材を巻いていったり、竿尻から600mm上がった位置から2枚目のカーボン素材を巻いくような設計や、調子以外にも強度やその他の調整の為に複数のカーボン素材を巻いていくような設計も多種多様にあります。

要するに様々な事を考えてカーボン素材の切り分ける大きさや形、枚数を考えていくのです。

大きさや形、枚数については改めて説明します。

さて、その切り分けられたカーボン素材の繊維の角度が今回のテーマです。

4軸の登場

カーボン素材の繊維の角度と言うと、4軸模様の素材が出てきたことで一気に認知されたように思いますが、それ以前からカーボン素材の角度を考える事は当然のようにありましたし、現在発売されている4軸模様がない釣竿でも、普通は素材の角度も考えられて設計してあると思います。

つまり4軸模様の素材の事は忘れてください。

0度の釣竿

強み

釣竿は曲げて使用するものです。曲がらない釣竿はありません。

釣竿が真下、もしくは真上に曲がるだけで成立する釣りならカーボン素材の繊維角度は0度が1番良いというのが私の考えです。

何故か?1番強度が出るからです。

1番強度が出るという事は、1番曲げられるとも言い換える事が出来ます。

弱点

0度の釣竿はねじれに弱いです。仕掛けをキャストする時、魚とやり取りする時、釣りという作業の中で竿がねじれている状態って結構あるのです。

そのねじれに対しての強度が弱いという事です。

また、ねじれる場面は釣りの場面だけでなく、ローリングマシーンと呼ばれる機械で、マンドレルにカーボン素材を巻きつける、制作現場でもあります。

ここでねじれたまま製造されると不良品になるわけです。

90度の釣竿

弱点

90度の釣竿は曲がりません。t数の説明をした記事内の「曲げ辛さ」と関連してきますが、曲げ辛くなります。

曲げ辛いと言う事は、曲げた時の強度も弱いという事です。

強み

こちらもt数の説明をした記事内の「曲げ辛さ」と関連してきますが、反発力が上がります。

反発力が上がると言うことは、弾性率も上がるこという事です。

驚かれるかもしれませんが、0度の30tと、90度の24tなら反発力は後者の90度の24tの方が上です。

当然、素材自体の弾性率が上がる事はないのですが、角度によってはこういう事が起こります。

0度と90度のまとめ

結論から言うと0度と90度だけで実釣に差し支えない釣竿は作れます。

0度、90度の特性をどう活かしながら組み合わせ作っていくかは設計士次第です。

ありがとうございました。

ちょっと待った!45度の釣竿は?

0度と90度の間。といえば簡単ですが、そういうわけにもいかないのです。

0度と90度の中間

・曲げ辛さ=反発力

・強度

は0度、90度の中間の値になります。

45度の強み

90度の弱点の項目で敢えて言わなかったのですが、90度の対ねじれ性能は0度とほぼ変わりません。つまり弱いと言えます。

0度、90度の両方がねじれに弱いのに対し、45度は強いです。

つまり曲げ辛さと強度はそこそこ、ねじれに強いという45度という事になります。

カーボン素材の繊維角度についてのまとめ

再度結論を言うと、0度90度だけでも釣竿は作れるけど、45度があったらもっと設計しやすくなります。

0度が基本で90度や45度を目的に合わせて組み合わせたり、時には45度より浅い角度で組み合わせたりして思い描いた釣竿に近づけるよう試行錯誤しながら設計していくのです。

追記

45度の従兄弟みたいな存在の135度も組み合わせれば、さらに設計の幅が広がります。

本当にありがとうございました。

ぱおログの管理人「ぱお」です。 元釣具メーカー勤務で、主に釣り竿(ロッド)の設計と開発に携わっておりました。 自社ブランドはもちろんOEMで様々なブランドの竿も設計してきた経験を活かして釣り人の皆さんに役立つ情報を発信していけるようなブログを目指しております。

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