プリプレグのレジンとは②

前回はレジンの役割について説明しました。

プリプレグのレジンとは

その中で

カーボン繊維にレジンが組み合わさったものがプリプレグで、プリプレグの体積に対しどれだけの割合のレジンが含まれているのかはプリプレグのメーカーのラインナップ次第ではありますが、その割合が多いと高レジン、少ないと低レジンという事になります。

レジンが多いということはカーボン繊維が少ない。

レジンが少ないということはカーボン繊維が多い。

と言えます。

つまり低レジンの方がカーボン繊維が多く含まれる分、機械的性質、物理的性質には優れているという事になります。簡単に言ってしまえば強度や軽さや弾性率等において低レジンは優れるという事です。

と記述しました。

これだけを読むと「なんだ低レジンのほうが良いんじゃん」って思えてしまいます。

私自身がミスリードするような書き方をして申し訳ないのですが、良い悪いで二分することは出来ません。

レジンはエポキシ樹脂でカーボン繊維を繋ぐ接着剤の役割がある。

と前回説明しました。

高レジンとは

このエポキシ樹脂自体には「粘り強さ」と「弾性」みたいな特性を持っています。エポキシの接着剤と聞けばなんとなく想像がつくかと思いますが釣竿・ロッドの成型でもまさにその役割を果たします。

この「粘り強さ」は釣竿・ロッドの「調子」に大いに影響してきます。

同じ30tカーボンでもレジンの量の違いで粘りがあるとかないとか。乾いた感じだなとか。いろいろな表現がされますが、ブランクの出来を左右してきます。これが釣りにどう影響があるかは人それぞれで、説明も非常に難しいのですが。

比類なき感度や、強靭なパワー等のよくある釣り人的キーワードから意図を汲み取り設計するのは苦労する事が多いのいですが、釣り人的にはトルクと言われる粘り強さに関しては比較的理解しやすく、設計でコントロールしやすかったりします。

レジンが多ければ粘り強さが増すので、釣竿・ロッドにとっては良い事ずくしと捉える人も多いかと思いますが、気をつけなければいけないのがレジンの量で弾性率が変わってくるということです。

弾性率とは「曲がり辛さ」の事ですから、簡単に言えば硬さや張りが足りなくなってしまうのです。

レジンの量で24tと30tで弾性率が逆転することもあります。

弾性率は角度によっても変わります↓

4軸模様だけで判断できない素材の繊維角度

低レジン

レジンの量で弾性率が変わるということは釣りをする上でのいわゆる「感度」にも多大な影響をもたらします。低レジンの素材は感度の良い釣竿・ロッドになりやすい傾向にあります。

しかし低レジンだと先述した粘り強さが下がるとも言えます。

さらにプリプレグの製造過程で少ない樹脂を浸透させる事が困難であるため、不良が出やすいということもブランクの設計上無視できない要素になります。

少ない樹脂をカーボン繊維に浸透させる方法や接着力、樹脂、溶剤等の研究が進んだ結果が以前に説明した東レの「T1100G」になります。

東レT1100G

まとめ

前回と合わせてプリプレグのレジンの説明をしてきました。

レジンの量って案外重要だと思いませんか?

私自身、これを書きながら何トンのプリプレグだからどうとかって言うことが改めて無意味だと感じました。

ぱおログの管理人「ぱお」です。 元釣具メーカー勤務で、主に釣り竿(ロッド)の設計と開発に携わっておりました。 自社ブランドはもちろんOEMで様々なブランドの竿も設計してきた経験を活かして釣り人の皆さんに役立つ情報を発信していけるようなブログを目指しております。