釣竿・ロッドの価格ってどうやって決まるの?

釣竿・ロッドの構成から考える

ブランクがあってハンドルがあってガイドが付いてっていう釣竿・ロッドの構成を考えれば、そこに材料代や部品代がかかってくるのは想像出来ると思います。

それ以外はどうでしょうか。

ブランクを作る、ブランクに色を塗る、ハンドルを組み立てる、ガイドを取り付ける、各作業での工賃がかかってきます。

つまり材料費があって部品代があって各種工賃があって、釣竿、ロッドの価格が決まってくるのです。

原価に対して、どれだけの利益を求めるか、つまり定価と卸値をいくらにするかは各社、各メーカー毎に変わってきますからなんとも言えませんが、0から釣竿、ロッドを作ることのできる会社やメーカー、もしくは同等の知識も持つ会社やメーカーは、このような各項目を考慮し算出していると思われます。

ブランクの材料費

釣竿、ロッドを開発する上で最も重要なブランクの成型で使う、プリプレグと呼ばれる素材にかかる材料費があります。

その材料費はプリプレグの銘柄と、使用する量(シート状ですから面積)によって変わってきます。

プリプレグの銘柄と使用する量は釣竿、ロッドの種類やシリーズに変わってくるというより、設計によって変わってきます。

同じ釣竿、ロッドのシリーズでも番手によってプリプレグは変わってきます。

素材によってどうこう言えないのが釣竿、ロッドの世界というのは何度も説明してきました。

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プリプレグの価格というのは、幅があり、また私自身が素材の専門家ではないため詳しく説明出来ないのですが、分かりやすく言えば、弾性率が高くなればなるほど、価格も上がる傾向にあります。

(当然プリプレグの特性によってそうでない場合もあります)

プリプレグの価格は1㎡あたりの価格で取引されることが多いです。

つまりブランクの成型に使われるプリプレグの総面積で材料代が計算出来るというわけです。当然全長の長い釣竿・ロッドはプリプレグをたくさん使うので高価になりますし、同じ理由で肉厚のある釣竿・ロッドも高価になります。

ここで気をつけなければいけないことがあります。

幅1000mmのロール状のプリプレグから、目的に合わせた形に切断したときに、何枚取れるかということが重要になってきます。

下記の図をご覧ください。

辺の長さが600mmと500mmの台形状に切断する場合、幅1000mmのプリプレグからは1枚しか取れません。

余りのプリプレグからは辺の長さが400mmと500mmの台形しか取れないことが分かると思います。

余ったプリプレグは使うか使わないか分かりませんので、計算上は破棄することになります。

この場合幅1000mmの面積分の材料費を計上することになります。

このような状況を回避するために設計を少し見直します。

例えば600☓500mmを300☓250mmに変更したら、変更後のプリプレグは幅1000mmから3枚取れることになります。

この時の釣竿、ロッドのブランクに必要なプリプレグは600☓500mmですから、300☓250mmを2枚巻きつけることで同じ肉厚を実現できます。

1本を作って、余った残りの300☓250mm分のプリプレグは2本目を使うときに使えますから、1.5本分のプリプレグを取れるということになります。

この部分のこの見直しで約3割のコスト削減が成功したということになります。

プリプレグの材料費の計算は、単純な面積の計算だけでなく、1000mm幅から何枚取れるかと言うことがわかっていただけたと思います。

これはほんのひとつの例ですが、ブランクの設計は「調子の追求」という本線以外に考えることがあるのです。

ブランク成形の工賃

またブランクの成型は人の手で行われる工程が多いので様々な工賃がかかってきます。

当然各社、各メーカーで計算方法は違ってくると思いますが、簡単に言えば難易度によって工賃が変わってきます。

難易度というのは、あくまでも工員目線で考えられます。

マンドレルが細い、プリプレグが薄い、特殊、プリプレグのカッティングパターンが複雑等だと難易度が高いという事になります。ボロンをブランクに使用するのは怪我する恐れがあって危険みたいな話聞いた事ないですか?

またマンドレルの話のなかでも工賃について少し話しました。

マンドレルの大切さ

難易度が高ければ高くなるほど当然工賃が上がり、それが完成した釣竿、ロッドの価格を左右することになります。

設計士は先述した通り「調子の追求」以外の仕事としてこれらの工程を考え、計算する事になります。

ブランクの成形後の研磨、塗装、各種組立にもそれぞれ工賃がかかってきますが、完成品に長くなりますのでまたに機会にさせていただきます。

最後に

OEMでロッドを作っている会社やメーカーはこのように価格が決まってくる事はほとんど知らないと思います。

OEMのロッドを悪く言うつもりは毛頭ございません。

ロッドの出来に関しては、自社だろうがOEMだろうが、依頼会社、メーカー、依頼者次第だというのは以前説明しました。

OEM生産の釣竿ロッドの真実

ブランクの調子等の出来と細かなコストの調整は自社設計、自社製造ならでと言えますし、その結果、より適正な価格で提供しやすいのも自社設計、自社製造なのかなという考えですが、OEMだろうがなんだろうが個人の価値観の元、その価格に見合うかそれ以上の価値を見い出せるなら、それはそれでとても良いことだと思います。


ぱおログの管理人「ぱお」です。 元釣具メーカー勤務で、主に釣り竿(ロッド)の設計と開発に携わっておりました。 自社ブランドはもちろんOEMで様々なブランドの竿も設計してきた経験を活かして釣り人の皆さんに役立つ情報を発信していけるようなブログを目指しております。

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